静かに心へ染み込む、団鬼六原作の官能ドラマ
団鬼六原作・廣木隆一監督による 『不貞の季節』 は、派手さよりも“静かな余韻”を重んじる心理ドラマです。
主演は大杉漣。
押しつけがましさのない演技で、揺れ動く感情の輪郭を繊細に描き出します。
作中には、緊縛が登場するシーンもいくつか盛り込まれており、
作品全体が持つ 控えめで心に響く官能性 に奥行きを添えています。
刺激的ではなく、“物語の呼吸”のようにそっと作品に寄り添う描写が印象的です。
ネタバレなしのあらすじ──夫婦の距離が変わる瞬間
主人公は、かつて純文学を志しながら、いまは官能小説を書いて生計を立てる中年の作家。
作品世界では大胆な性を描く彼ですが、現実の夫婦生活はどこか冷え、距離が生まれつつありました。
ある日、彼は妻の不貞に気づいてしまいます。
怒りとも悲しみとも言い切れない感情が胸の中で混ざり合い、
日常の風景が少しずつ別の意味を帯び始める。
派手な事件が起こるわけではありません。
しかし、沈黙の長さ、視線の揺れ、会話の途切れ方──
そうしたささいな変化によって、夫婦の距離がゆっくりと変わっていく様子が描かれていきます。
作品の中には、緊縛シーンも登場しますが、
それは物語を壊すほどの強い刺激ではなく、
人物の心情に静かに寄り添う“ひとつの描写”として扱われています。


総評──静かな官能と心の揺れが重なる、大人のための一本
『不貞の季節』は、
官能映画としての刺激を求める作品ではありません。
むしろ、
夫婦という最も身近な関係が、いつのまにかずれていく様子を静かに見つめた心理劇
として味わうのがふさわしい一作です。
大杉漣の演技は抑制が効いており、主人公の揺れ動く気持ちを自然に映し出しています。
そして緊縛を含む官能描写は、過度になることなく物語の余韻を深め、
作品そのものに “大人の静かな官能” を与えています。
見終わったあと、胸の奥にふわりと残る感覚。
言葉にしづらい思いがゆっくりと積み重なっていく、
そんな 心に響く官能的な映画 です。























